人生の逆風の中で見つけた希望の風を、小説、エッセイ、童話、詩などで表現していきます。

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風の仲間たち 戸惑いと悩み

庭のホテル1


このブログでもたびたび登場していただいている我が積年の友に、老人特有の症状が顕著になり、優雅な独身貴族生活が無理になった。もちろんご本人が判断したのではない。姉妹を愛する方々の(教会)一致した意見で教会に近いところがいいと決定。幸い、うってつけの住まいが見つかった。かくして友人は私の最も近き隣人となった。それから
2年が過ぎた。半年も持つまいとの当初の予想を裏切って、以前より笑顔が増え明るくお元気なった。ただし、症状は悪化の上昇線を伸ばしている。ケアー万全の終の棲家対策がひそかに取りざたされ始めた。

 

私の話を聞いて、施設からわざわざ資料を取り寄せてくださった方もおられた。それとなく皆で話し合っていた。ところが、思いがけない展開になった。地域の一つの小学校が少子化で統廃合され、かなりなスペースが空いた。30年も前から、いつか老人施設になるのだとは聞いていたが、まさに、そこに、大規模な施設が誕生したのである。特養、ケアーハウス、グループホームと3種類が設けられた。いつも使うスーパーのすぐ先なので、工事が始まって以来、私は何度も何度も見に行った。こんなところに愛する隣人が入れたらどんなにいいだろうと考えるようになり、いつしか祈りになった。

 

隣人担当のケアーマネさんからそこへの入居の話が出て、教会をあげて大賛成。姉妹の実情を鑑みるにグループホームが最適だとのこと。隣人にとっても勝手知ったる地域であり、教会のそばであり、こんな条件の良いところはどこにないのである。私はつくづく神様の恵みの大きさを知る思いがした。まるで神様が施設を担いでこられたように思われた。

 

10日ほど前、見学会があった。ご本人と、地方におられる甥御さん、牧師夫人と私で出かけて行った。ケアマネさんも来られた。第一印象はまるでシティホテルのよう。特養、ケアハウス、グル―プホームと見て廻った。グループホームは9名づつの2つ。募集人員は18名である。我が友人もびっくりして、こんな立派なところに入れるの、とご満悦だった。

その場で仮手続した。後は健康状態など病院の報告書をまつばかりである。

 

ところが、今、困ったことになっている。我が隣人は断固として、行かないといいだした。皆、彼女を知り尽くしているから、決して何度も話題にしたり、催促がましいことは言わないのだ。彼女は、遠いという。今までのように教会へ行けないという。よほど遠いところへ行くような気がしているのだろうか。不安な気持ちになっているのだろうか。

 

そういえば2年前、今の住まいに越してくるときもひと騒ぎもふた騒ぎもあった。気持ちが揺れて、変わった。最終的には神様のお導きであろう、納得することができた。越してきてからは大喜びで、窓から少しばかり見えるスカイツリーを自慢気に話し、私たちは何度も見に行った。いまでは、30年も住んでいてかつての地を口にしたことはない。

素直で順応性に富んでいる神の子なのである。

 

しかし、今、行かないと強く言い張るのを見ると、はやり大きく戸惑いそして悩んでしまう。

手続きは進み、間もなく許可になる日が近い。さて、そのとき、どうなるのだろう。姉妹を愛する人たちはひそかに懸命に祈っている。その日、心から喜んで入居できるようにと。

実際、姉妹にとっては天国の次にすばらしい住まいだと思っている。だれもが入れるわけではない。もう一人の、90歳を迎えた独居老人であるK姉妹は、かなり不自由ではあるが、しっかりしすぎていて対象にならないのだから。

 

神さまは必ず姉妹の心を変えて、喜んで移転できるようにしてくださると信じつつも、今、悩んでいる最中である。

 

 

 

 

 

 

 

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日々の風から 今日はお汁粉

 

今日はお汁粉なのです。明日もかもしれません。残っていれば、最後はまた私がいただきます。お汁粉は珍しくありません。ときどき、それもかなりときどき作ります。私は豆党です。あるとき、豆類が好きなのだとわかりました。ちょっと知識が増すにつれて、豆は植物性たんぱく質が豊富で、バランスの良い食べ物の優等生だと知りました。そこで、さらに豆の摂取に弾みがつきました。

 

高年齢になるにつれ、食べ物の嗜好が変わるとはよくきくことですが、私も例外ではなく、近頃はますます動物性たんぱく質を欲しません。健康的には偏食はいけない、鶏肉も、豚肉も、牛肉も平均して食べなければいけないとよく聞きます。でも、まず心が、そして体が抵抗します。つまり、食べたくないのです。がんばって時にはいただきますが、そのたびに、当分、もう結構だと思うのです。

 

笑顔で思い浮かべるのはお豆たち。木の実たち、時にドライフルーツです。豆はよく買い込んでおきます。しかし乾物とはいえ、新物が出回る頃には古いものは使い切るようにします。

 

大豆、小豆、黒豆、うずら豆 時に花豆などが主なものです。食卓に豆料理が代わる代わる

登場するようにしています。大豆は立派な副食です。豆料理と言っても、私は簡単な食べ方しかしません。水に戻して炊くだけ。自己流です。

 

大豆は時々酢大豆にします。またこぶを加えてあまからにしっかり炊き、空き瓶に詰めます。いくつも並ぶと楽しくて仕方がありません。娘家族に分けますが、孫たちは大歓迎とはいきません。最近、五目豆は作らなくなりました。シンプルに豆だけのほうがおいしいです。

 

娘は圧力釜で黒まめやうずら豆を短時間で煮てしまいます。私に似たのでしょうか、よく作ります。それをわけてもらって楽しくいただきます。

 

豆が切れたときは納豆です。納豆は作れませんから煮た豆とは別に、よくいただきます。

 

何と言っても心楽しいのはお汁粉です。冬はあつあつで、夏は冷やして。時に冷凍庫で凍らせます。これからは、お汁粉は冷凍庫行きが多くなるでしょう。お汁粉といってもお餅を入れるとは限りません。小豆だけでいいのです。この方がおいしいのです。やはり豆党でしょうか。

 

 

 

 

 

 
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日々の風から 花冷え

SAKURA3 


昨夜は一晩中強い雨脚が窓をたたいていました。睡眠中にも音が聞こえてきました。今日は花冷えで、二月下旬の寒さと報じていました。

 

花冷えとは美しい表現です。あの桜が、寒さをもたらしているとは思いませんが、この時期必ず季節が逆行するような日があります。季節のユーモアかいたずらでしょうか。東京の桜もこれでおしまいでしょう。

 

桜前線はまっしぐらに北上しているようです。月初めに訪問した仙台地方もまもなく花の季節を迎えるでしょう。被災地のいたるところに陽春と満開の桜風景が繰り広げられるのを願います。束の間ではあっても、花に心慰められてほしいものです。

 

今年は遠くへお花見に行けませんでした。近所のミニ公園が唯一の観桜の席。今週は、あわただしかった一日の合間を縫って、朝に夕に行ってみました。惜しくて惜しくてたまりません。これも老いのせいでしょうか。

 

とうとう初めてのことをしました。桜の下にあったベンチに座ったのです。

夕暮れが迫っていてほとんど人影がありませんでした。数本の桜樹が、一脚のベンチを取り囲んでいるのです。見上げれば、頭上は咲きに咲いた桜花のテント。その中にじっと座りました。下町のミニ公園の中とは思えません。別世界でした。ひとよそぎの風もなく、時が止まったようでした。びっしりと隙間なく花をつけた枝々は空に張り付いたようです。

 

花房が揺れ始めました。と、いっせいにさわさわと動きだし、まるで首を振り、手を振っているようでした。なにかおしゃべりが始まったようです。風が通ったのです。風は私の中も通り抜けました。それは紛れもなく希望の風でした。神さまの希望の風でした。

 

 

 SAKURA

 

 SAKURA2

 

 

 

 

 

 

 

 
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旅の風から 3・11の被災地に立つ 流された教会

高砂 十字架

 

被災地3

 

陸前高砂の海


 
この十字架には感動のエピソードがあります。あの日、この辺りは10メートルを越す津波が襲ってきました。白波の立つ海が見えましたが、距離はわかりません。かなり遠くです。津波は容赦なく付近を破壊し、力任せにあらゆる生活を人命を曳きさらっていきました。あの午後2時46分ごろ、周辺の民家にはお年寄りと就学以前の幼い子どもたちだけがいたそうです。教会から少し奥に鉄筋の小学校校舎が建っていました。

 

生徒たちは先生がたの素早い判断と誘導で屋上に避難しました。津波は校舎めがけて突進してきました。ところが、波は教会にぶつかり、高さが落ちたそうです。波は校舎へも当たりましたが、力と高さが衰えていたので、屋上までは達せずに、避難した人たちは一人も犠牲になることはなく、全員が助かりました。その夜は雪がちらついたそうですが、全員救助されました。

 

教会は大津波の中に消えましたが、十字架だけが傾いて残っていたそうです。それを教会員たちが地域の復興を祈り願って再建しました。

 

私たちは涙ながらに十字架を見上げ、手でさすりました。教会が流された話を聞いた話は、当初、受け入れ難いことでした。どうして教会がーーーと、戸惑いがあったのです。しかし、この事実を知って驚きました。教会は人命救済のための大きな働きをしたのです。いわば、命がけで働き、神様の使命を果たしたのです。こんな働きもあるのだと、目を開かれる思いがし、震えるような感動に迫られました。教会は海底の藻屑になってしまいました。しかし、そのために貴い人命が救われました。いわば身代わりになったといえます。

 

教会の建物の消滅、言い換えれば、死ですが、その死はそれだけでは終わらず、これから後々までも美しき救済物語として語り継がれていくでしょう。さらに、きっと教会は遠からず以前に勝る会堂を与えられるでしょう。主が放っておかないでしょうから。復活の希望ではないかと思い、固く信じました。イエス・キリストの十字架の死と復活が重なりました。

 

私たちが十字架とその周辺を見つめている間、運転手さんは商売を度外視してじっと待っていてくださいました。来て、見てくれるだけでも土地の人々には励ましになると聞きました。

 
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旅の風から 3・11の被災地に立つ 十字架を探して



陸前高砂 

被災地の十字架1


十字架のプレート



短い春休みです。我が家の一人一人はそれぞれに予定があり過密スケジュールです。

ようやく折り合いがついたのが42日、3日のみ。どこかへ旅したいが、さて、どこへ行くのがいいのだろうか。メンバーは長女と二人の孫と私。婿さんは休みどころではない。

 

被災地に行ってみることになりました。何も直接的な奉仕はできないけれど、この目で現場を見て、心に刻みつけておきたい。そこに立って小さいけれど祈りをささげたい、同時に、多少でもお金を落とすことで、復興の大河の一滴になれたらと、精一杯の心の捧げものを抱えて早朝の仙台行新幹線に乗り込みました。旅のスタイルは、ネットから新幹線と宿の格安パックを入手しました。それにしても安すぎる。正規の新幹線往料金以下なのです。こんなのあり、でしょうか。

 

目指すは、仙台から石巻までを走る仙石線の途中駅、陸前高砂の海岸に建つ、シーサイドチャペル跡の十字架モニュメントです。教会がまるごと津波にさらわれてしまったので、今は、JR東仙台駅近くへ仮越して、礼拝をしているとの情報を得ましたので、まず教会を訪ねることにしました。そこへ行けば、十字架モニュメントの場所がわかるだろうと思ったのです。

 

仮越しの教会は小さな喫茶店を借りて活動していました。しかし、シャッターは降りたままでどうにもなりませんでした。十字架の立つ海岸へは電車を乗り継がねばなりませんでした。仙石線の子鶴新田駅まで延々と土手の上を歩きました。さすがに東北です。関東では感じられないような重い寒風が体にまとわりついてきます。仙石線に乗り込んで陸前高砂で降りました。列車のドアーは利用者がボタンを押して開閉します。孫たちはそれがしたくて争っていました。

 

陸前高砂の駅前に出たはいいけれど、どこに十字架があるのかはわかりません。住所もありません。一台のタクシーに近づき、話しますと、確かにそんな話を聞いたことがある、場所はわかると思うということで、心許なかったのですが、お願いしました。

 

運転手さんは初老の男性でした。まるで観光ガイドさんのように雄弁に大震災の当日の様子や後日談、道々の今なお残る被害の爪痕などを逐一語ってくださいました。100%土地の言葉で。私達はうなづいたり質問したりして楽しく話ができました。

突然運転手さんが言いました。

「わたしの言葉がわかりますか。関西の方を乗せたけど、何を話しても応答がなく、最後に、何を言っているのかわからないと言われました。言葉が通じてうれしいなあ」と。そこで大笑いになりました。

 

駅前は当たり前に家が建ち、お店があり、人々が往来していましたが、まもなく建物もまばらになり、人影も少なくなりました。海だといわれる方向を、運転手さんはじめみんなで目を凝らすと、真っ平な平原?のかなたに、小さく突起するものが見えてきました。

「あれだ、あれにちがいない!」と叫び声をあげて近づきました。

一帯は、コンクリートの土台がむき出しているだけの、いわば死の荒野でした。降り立つと足元は海岸の砂浜のようで、海の匂いがしました。遠くに海が広がっていました。

 

死の荒野に、十字架のモニュメントがくっきりと立っていました。高さのあるものは十字架のみでした。モニュメントは4メートルもあったでしょうか。(つづく)

 

 

 

 

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