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書林の風から 『トルストイの日記抄』古本のおもしろさ

書林の風から 『トルストイの日記抄』古本のおもしろさ

 

この夏にヘンリー・ナウエンの著作を立て続けに読んで、学ぶところ大なりの2乗、3乗の収穫をいただいた。その中で、初めて読んだ「最後の日記」は再読しているところだが、ふと、「日記」というジャンルに心惹かれた。「日記文学」と言っていいと思うが、以前に、ドナルト・キーンの「百代の過客」(続)についてはこのブログでも感想を述べたがあれ以来、「日記文学」に捕らえられていた。若い時から文豪たちの小説はずいぶん読んだが、「日記」は読まなかった。そこまでは思いが行かなかった。しかしここにきて偉人たちの日記を読みたくなり、手始めに、トルストイが頭に浮かんだ。それで、調べ始めた。簡単に文庫本でもないかとネット検索して見つけた。思ったものがなくて、岩波文庫の「日記抄」を買ってみた。

 

古いものしかなく、半分心配しながら取り寄せたが、開けてびっくりで、触りたくないくらい古い。中から虫でも出てくるような気配。手袋をして開きたかったがそれではページがめくれない。1,2頁立ち読みしたが、読み続ける気になれず、図書館を思い出して走った。

 

文庫はなかった。職員がていねいにパソコン遊泳してくださったが、私の持っているものが国会図書館にあり、データ化されたものを見るだけという。よく、現物がありましたねと感心されてしまった。そんな稀少なる本なのかとこちらも感心したが、しかし読み続ける気になれない。奥付を見ると、『昭和十年七月十五日 第一刷發行 昭和二十五年十二月十日 第十刷 発行 定価(価は旧字)六十圓』とあり、印紙が貼ってある。

 

もう少しきれいな本がないかとまた検索して、しかし、高額でないものを買ってみた。すぐに届いた。こんどは触われるし、シミも汚れも少ない。これなら読めると安心した。そして奥付を見た。『昭和十四年一月二十五日 第五刷發行 定価(価は旧字)四十銭(銭は旧字)』印紙は訳者除村氏の印鑑が押してあった。つまり、あとから買ったほうが前のより十年も前に発行され、戦前である、定価も四十銭と、想像もできない時代の本なのだ。さらに、表紙のタイトルの横書きは、右から始まっている。驚きの連続である。

 

私は本の内容や日記文学をさておいて、二つの本を前にして「本」に対して味わったことのない新しい興味が湧き、心が掻き立てられている。神田の「古本屋街」が意味を持って迫ってきた。「本」の持つもうひとつの一面を垣間見た気がした。


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  • 2019.01.16 Wednesday
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