希望の風
人生の逆風の中で見つけた希望の風を、小説、エッセイ、童話、詩などで表現していきます。

書林の風から 『百代の過客<続>』ドナルド・キーン 金関寿夫訳 講談社学術文庫

GWは去った。風とともに去りぬ、ではなくて、五月の薫風を残して去った。その風を楽しんでいる。風は本のページをめくってくれた。少し前に紹介した800ページ近く、厚さ3.3僂傍擇峙霏腓癖幻頬椶任△襦いくら読んでもまだまだ半分もいかない。速読できないこともある。副題は【日記にみる日本人】である。作者の視点のユニークさ、鋭さに驚く。確かに日本には「日記文学」と呼ぶジャンルがある。他の国の事は知らないし、日本の日記文学についても知ることは少ない。ただ、平安時代に紀貫之を始め多くの文人たちが日記を書き、それが今に至るまで残っており、学校でもそのさわりを学んだ覚えがある。

 

しかし、作者のキーン氏は全く違う見方で多くの日記を紹介している。名前を一度も聞いたことのない人たちの日記、それも文学ではない日記を丹念に読み込んでいる。途方もない作業である。日本文化の研究家とは言え、外国の方だと思うだけでただただ驚くばかりである。この膨大な本を、たとえエッセンスだけでもまとめたいと思えども、難業である。

 

しかし、この本にはぜひ挑戦してほしいと願う思いでいっぱいである。キーン氏は、日本人には日記をつける習慣が強い位置を占めているという。そういえば私なども小さい時から日記を付けてきた。一年の初めに日記帳を買った。「三日坊主」などと嫌味なことわざは日記の事でよく使われた。

 

とりあえず目次を紹介する。簡単なコメントを付けてみた。

 

*遣米使日記・作者は村垣淡路守範正・日米修好通商条約を批准するため万延元年(1860年)にアメリカへ派遣された使節団の副使として渡米。その旅日記である。

*奉使米利堅紀行・作者は幕府の軍艦奉行、木村摂津守喜毅・有名な咸臨丸に乗り込む。艦長は勝海舟だが、勝は日本を出る前から発熱し、航海中もずっと船酔いのため自分の船室を出ることはほとんどなく、艦長としてはあまり役に立たなかったそうである。 

*西航記・作者は福沢諭吉・幕府が派遣する。ヨーロッパの各国へ。

*尾蠅(びよう)欧行漫録・作者は市川渡・先の福沢諭吉らの使節団の副使の従者・自分は馬のしっぽにくっついた蠅ほどのものであると卑下している。諭吉とは違う視点で見て書いている。使節団員中、物事を一番しっかり観察した人。

*仏英行・作者は幕府の官僚柴田剛中・幕府が派遣した第四回使節団。横須賀に建てる製鉄所の建設準備のためにフランスとイギリスを訪問する。

*航西日記・作者は渋沢栄一・幕府の公式使節団6つの内の最後。フランス政府の要請によって慶応3年(1867年)送られた。時にパリで万国博が開かれていた。団長は将軍慶喜の弟徳川昭武、30人の幕吏で組織された。渋沢は財政方面で注目されていた。

*米欧回覧実記・作者は久米邦武、使節団の正式書記官として任命。明治政府がアメリカとヨーロッパへ初めて派遣した使節団。大使岩倉具視率いる48人。副使として木戸孝允、大久保利通、伊藤博文など明治政府の重要高官が加わる。それぞれの国へ散るたくさんの留学生とともにアメリカの飛脚船アメリカ号に搭乗する。

*航西日乗・作者は成島柳北・明治4年、東本願寺現如上人のヨーロッパ旅行に随行。幕府官僚の子。西洋に通じていたことから外国奉行に任命されるが明治の代になってすぐに職を辞す。二君に仕えるのを拒否したからである。当時の他の日記にはない洗練された文学的な文体。書くのが楽しいから書き、人を楽しませるために書いた。

 

以下なお23の日記が続く。中には漱石日記、新島襄日記、一葉日記、津田梅子日記、子規日記、啄木日記などなども収録されている。初めの方の日記で、あの幕末の動乱期の中で、幕府がアメリカにヨーロッパに、6回も公式使節団を派遣しているのを知ったことは大きな驚きであった。幕府は自分たちの世が続くことだけに汲汲としていたと思っていたが、大きな認識不足であった。歴史観が間違っていたのかもしれない。今後この本についてここで触れることはないだろうが、じっくり読んでいきたい。

 

書林の風からcomments(2) ☆ - ★ kibounokaze
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Comment








三日坊主の私にも一冊だけ日記帳が残っています。学童疎開の時の日記帳です。私個人には貴重な資料です。
posted by 美雨 : 2018/05/07 11:00 AM :
日記は貴重ですね。ある時からPCに書き出しましたが、心の内を書きすぎたので廃棄しました。日常の出来事の記録が案外に後になると役に立ちます。
posted by 美雨さまへ : 2018/05/07 8:29 PM :
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