人生の逆風の中で見つけた希望の風を、小説、エッセイ、童話、詩などで表現していきます。

旅の風から 上五島のカトリック教会群を巡る旅 その6 キリシタン洞窟 ハリノメンドへ

旅の風から 上五島のカトリック教会群を巡る旅 その6

キリシタン洞窟 ハリノメンドへ

 

 

 

 

 

 

 

 

昨夜の夕食はお魚づくめ、それも獲れたてのものばかりでした。なにしろえび屋さんは「神部港」という小さな漁港に面しているのです。港にはボートより少し大きめの漁船が停泊していました。朝食もお魚づくめ。しかしゆっくりいただいている暇もなく、外に飛び出しました。連泊なので大きな荷物は置いていけます。これはなにより感謝です。

 

この朝、最初にキリシタン洞窟へ行きます。海上タクシーで行くとかねてから聞いていましたが想像がつきませんでした。「洞窟」、「海上タクシー」とう聞きなれない言葉に好奇心とスリルを掻き立てられました。「洞窟は」海の中の離れ小島にあり、そこへ船で渡って見学することだとわかりました。宿のすぐ前の港にはすでに船が待っていました。20名全員が乗れるのですからちょっとした遊覧船です。船体は黄色、船の名前は「あやかぜ7」と言います。ドキドキ、わくわくしながら乗り込みました。

 

今日こそ「巡礼ガイド」氏がおられました。Mさんと言って、自己紹介によれば80歳、代々のキリスト者だそうです。この島で暮らしてきた方らしく、潮風や太陽のしみ込んだ健康そうな肌をしておられ、小柄ながら体力もおありのようでたくましさがにじみ出ていました。語り口調は歯切れよく明快でしたが、物静かですぐに親しみを感じました。

 

船は小さいせいかエンジンの音と振動は相当なものでした。海面との距離も近く、船体にぶつかる波しぶきが直接飛んでくるような気がしました。ところが、ところがです。Mさんが「南風が強くなると波が高くなり島に近づけないのです。どうやら今日はそのようです」と説明され、瞬く間に驚くような大波が立ってきました。

 

神部港のあたりと同じ海とは思えないような、別世界に来たような、大荒れの海です。だんだん激しさを増してきます。座席の背の手すりにしがみついて身を縮めました。Mさんは「今日は島に渡れないかもしれません」としっかり立ったまま言われます。船は今にも倒れんばかりです。「木の葉のように揺れる」どころではありません。波に叩き潰されそうです。ジェットコースターのようなアップダウンもあります。悲鳴、うめき声が出てきます。

 

船酔いするなと思いました。おなかに力を入れ、全身にも力を入れ、少しでも揺れの衝撃がを減らそうと努めました。Mさんは船頭さんを「島きっての名船長さん」だと太鼓判を押されました。おそらくこのあたりの様子は自分の家のように知り尽くしておられるのだろうと信頼感はありましたが、船体をひっくり返すような大波の攻撃にはなすすべもなくひたすら身をこわばらせて、主よ、主よとつぶやきながら歯を食いしばっているばかりでした。

 

洞窟が見えてきました。

 

 

 

「ハリノメンド」とは五島の方言で「針の穴」の意だそうです。遠くから見ると洞窟がまるで針の穴のように見えるためでしょう。実際、黒々とした岩肌の真ん中に穴が開いているのが見えました。「巡礼ガイド」M氏の説明によりますと、

 

明治元年、五島のキリシタン探索は、ますます厳しさを加え、 五島崩れ といわれる最後のキリシタン弾圧の嵐が吹き荒れました。この弾圧の嵐は、若松周辺でもそれぞれの集落で起きました。そのような中で里ノ浦地区のキリシタン達は迫害を避けてこの洞窟に隠れました。洞窟は奥行50m、高さ5m、幅5mT字型で、入り口はかなり広い海蝕台場の背後にある岸壁の裏側にあって、海岸からは見えないので、隠れ場には適していました。里ノ浦の山下与之助、山下久八、下本仙之助らは話し合って、当分の間の生活用具や物資を持ってひそかにこの洞窟に隠れました。しかし、ある朝、朝食を炊く煙を、沖を通る漁船に見つけられてしまいました。さっそく役人たちが乗り込んできて捕らえられ厳しい拷問にかけられました。この時以来キリシタンワンド(湾処)洞窟と呼ぶようなりました。昭和42年、苦しみに耐えて信仰を守り抜いてきた先人達をしのび、窟の入口に高さ4mの十字架と3.6mのキリスト像が建てられました。毎年11月には近くの土井ノ浦教会の信者100人ほどが集まって祈りを捧げています。

 

私たちは島には上陸こそできませんでしたが、船長さんは荒波の上に船が浮かぶように最高のテクニックを駆使してくださり、波の合間を縫って窓を開けてくださいました。私はよろよろと立ち上がってカメラを向けましたが、出来栄えがよくありませんでしたので、後日、Y姉から拝借し、使わせていただきました。

 

下船した時は命拾いしたような気がしました。みな一様に安堵の笑みを浮かべ、怖かったと口々に言い合い、少しも動じないMガイド氏と、何よりも船長さんに深々と頭を下げて感謝しました。ふと、ガリラヤ湖で突然の嵐に遭った弟子たちを思い出しました。彼らは慌てふためきおじ惑い、艫のほうで眠っていたイエス様に苦情を言ったのでした。体の方は多少胸がむかむかしましが次第に収まり事なきを得ました。しかし一日分のエネルギーをすっかり使い果たしたような消耗を感じました。

 

 

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