書林の風から 『みんな彗星を見ていた・私的キリシタン探訪記』星野博美 文芸春秋社

  • 2016.06.28 Tuesday
  • 15:23

書林の風から 『みんな彗星を見ていた・私的キリシタン探訪記』星野博美 文芸春秋社

 

昨年末から気になっていた本である。新聞の書評を切り抜いて机の前のボードに貼りつけたはいいが、買おうか図書館かと迷っているうちに日が過ぎてしまった。折しも、ノン・フィクション好きな姉妹が、キリシタンものだからとわざわざ知らせてくださった。図書館はリクエストが多すぎてようやく借りたとのこと。姉妹を追いかけてみましょうと、買うことにした。早速ネットで注文した。ハードカバーで462ページの大冊がきた。著者の星野さんはクリスチャンではないがプロテスタント系ミッションスクール出身で、キリスト教をたっぷりと肌に擦りこまれた人ではないかと思う。引きこまれて読んだ。

 

目次を見るだけでも心そそられた。

第一章 リュート

 キリシタンの時代

 縦割りの西洋梨

 リュートとビウエラ

 楽器の進化

第二章 植民地

 澳門

 世界市場

 千々の悲しみ

第三章 日本とスペイン

世界分割

家康とスペイン

嵐の前ぶれ

第四章 有馬

 リュートとマンドリン

 有馬のセミナリヨ

 原城

 1614年

 聖人と福者

第五章 大村

 大村家の苦悩

 純忠の影

 鈴田牢

第六章 第殉教

 空白の二年半

 つまずき

 カルヴァリオの丘

 絵に描かれた真実

第七章 スペイン巡礼

 バスクへ続く道

 ビトリアへ

 ラ・ハナ

 ロヨラとバスク 

 

400年前の日本にはスペイン、ポルトガルなどからいわゆる南蛮文化が押し寄せてきていた。戦国末期から江戸時代初期である。とくに華々しかったのはキリスト教の浸透であった。しばらくは物珍しさから寛容であった為政者は、やがて禁教に走った。弾圧と迫害、虐殺が徹底して行われた。それを星野さんは「東と西が出会った」と表現し、「その現場にいた人たちはどのような葛藤を感じたのか、異文化はどう受容され、拒絶されたのか。それを自分の体で感じてみたい」と思い立ち、体で感じるための試みや旅が始まって行く。

 

まず星野さんは(1966年東京生まれの女性、ノンフィクション作家)は天正遣欧使節としてローマに行いった四人が秀吉の前で音楽を演奏するが、その時使われた楽器リュートに興味を抱き、神田神保町の音楽院でレッスンを受けはじめる。この好奇心と実行力は、さすがにプロのすごさだとまず感動した。しかしリュートが主役でないことは明らかだ。読者歓迎の門口の花かご役である。

 

本著は日本キリシタン史を知るのにも役に立つ参考書ともいえる。イエズス会の宣教師フランシスコ・ザビエルから始まって、日本で活躍し、その名を知られている宣教師たち、九州のキリシタン大名たち、「天正遣欧少年使節団」のこと、秀吉による長崎での「26聖人の殉教」、家康と宣教師たちの動向、仙台藩による支倉常長率いる「慶長遣欧使節」、マニラに追放されたキリシタン大名高山右近、島原の乱原城など、本や映像でもたびたび出会ってきた出来事が次々に登場する。知らなかった初めての事件もあり、勉強になった。

 

最後に星野さんはスペインのバスク地方へ冒険の旅に出る。バスク地方はザビエルの出身地であるが、星野さんは日本へきて布教し殉教までした宣教師たちがどんな場所から来たのかを知りたいと思った。「キリシタン宣教師の入国者名簿」を調べてくと意外な事実が見えてきた。地図上に、出身地を赤○で囲んでいくと、スペインのバスク地方にかたまっているのに気が付いた。マニラの宣教師もバスク出身者が多い。それから星野さんは宣教師の出身地を一つ一つ訪ねていく。

 

最終章のスペイン巡礼にはその旅の様子が詳しく語られている。現地の人々や教会を守る神父との交流を通して、400年前の人々と、現代に生きる人たちの心が結ばれる一瞬を星野さんは実体験する。星野さんは信仰心を強調せず、迫害されても追放されても潜伏し続ける宣教師を、単に布教のためだけとは考えない。神父にとっては生まれたばかりの信徒の行く末と信仰の成長が気がかりだからと解く。神父たちは信徒の告解を聴きつづけるために残るのだと。それが真の使命だと。今の、教会用語では「牧会」であろう。

 

確かに、現代でも、信仰を持ってもじきに教会を離れ信仰を忘れる人たちが多いのを見たり聞いたりするが、その原因は「魂のケアー」つまり「牧会」の不十分さから来ていることもあると、そんなことを思った。

 

牢に繋がれた宣教師たちが、あの手この手で監視の目を盗みながら、本国やマニラの仲間たちに書簡を送り続けている。その中には苦難の中にいる日本のあの人、この人を金品で援助するようにとまで書かれている。そんな資料が残っているらしい。驚くばかりである。それらの一つ一つを星野さんは探して訪ねて、この一冊をものした。知られざるキリシタン史であるが、もっと知らねばならない、考えねばならない、そして今、もっと行わねばならないと強く迫られた。

 

 

 

 

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