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銀(シルバーエイジ)の風から 真夏の真昼に

 かんな
ロゴス氏より拝借
 

ドアーを閉めて通りへ出た。向こうから、見るからに超高齢の女性がシルバーカーに体をあずながらそろりそろりとやってくる。付き添いはいない。ああ、まるで母のようだ、そう思った。よく見ると顔の形も体つきも母に似ていた。地域の方に違いないが向こう三軒両隣りの方ではない。

 

すれ違いざまに、私は老女性の正面で立ち止まった。

「おいくつになられますか」訊いてしまった。

老女性は歩みを止めて少し腰を伸ばすと、私の顔を見た。驚いた様子もない。穏和な表情である。が、返事がない。ああ、きっと聞こえなかったのだと思って、もう一度質問した。

 

こんどは「年はいくつですか」と訊いた。聞こえたようだった。

「92歳です」とはっきり答えてくださった。

よく見ると、顔のしわの具合まで母のようだった。

「お元気ですね。暑いからお気をつけて」

老女性は目を細めてほほえんだ。すっかり邪気の消えた清い笑顔であった。

私はそのまますれ違った。が、どうしたことだろう、ふいっと涙がこみ上げてきた。自分ながら意外なことだった。しばらくするとそんな自分がおかしくなった。

私は後ろを振り返りはしなかった。もちろん老女性もそうであろう。

 

夏真っ盛りなのに、街路の公孫樹に早くも黄葉が見え、公園の桜の葉も赤付いているのがあった。蝉の遺骸も転がっていた。すっきりしない夏である。このところ巨大な積乱雲に会っていない。


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  • 2019.02.13 Wednesday
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  • 21:30
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コメント
92歳の女性に希望の風さんのお母さまの姿を
垣間見られたのでしょうね。

優しく声をかけられ、その女性も嬉しかったと思いますよ。
  • つっちー
  • 2009/08/06 10:31 PM
ときどき感情の揺れがあります。これも自然のことなのでしょう。無理にかき立てたりしないけど、無理に押しとどめることもないでしょう。むしろ、そんな小さな感情の波を受け止め、粗末にせず、できるだけ書き留めておきたいなどとおもいます。
  • つっちーさんへ
  • 2009/08/07 7:31 AM
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